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地下鉄内で呼び止められた。
「日本から来たの?」
日本人女性にとって、場合によってこの問いかけは
「何? だからなんなのよ?」
と、いきなり食って掛かりたくなる(実経験あり)質問だ。
それは、様々なところで言われるように、日本人女性に対する失礼な先入観から
来ている。
いまだに、「男に順応、豚もおだてりゃ…」なのである。
だが彼(アメリカ人、推定40歳)は少し違うみたい。
近々、沖縄で英語を教えたいということで、文化について色々と尋ねてきたのだった。日本人の知り合いも多いらしい。
私は基本的に、突然の友人、歓迎タイプなのだ。
そんな彼は見るからにハワイアンで、性格も明るかった。
金髪、青い目だが、色黒でアロハシャツを着て、貝殻のネックレスをしていた。
ボストン育ちだが、温暖な気候と海を愛し、ハワイ大の演劇学部を
卒業したらしい。 まあここは適当に頷いておいた。
「何か、歌を歌ってくれる?」
そんな私の要求(>地下鉄内!)を喜んで受け入れ、ジェスチャーつきで
愛の歌を歌ってくれたのだ! OK! 私と彼は、お友達になった。
彼の名を
ハンサムとしておこう。
名前の意味が「ハンサム」だし、実際、容姿は悪くなかったんだもの。
でも、それがつまり危険、ということくらいは分かる。
この男に惚れては…いけない!私の心の信号が静かに点滅を繰り返した。
「来週末に、一緒に海に行けたらいいと思う」
とハンサムは言った。 男性と、海…。
この間、一人で海辺に行き寝転んで本を読んでいたけど、途中で飽きて近くのおばあちゃんと談笑していたのとは…、違う!
でも私は忙しく帰りの遅い日が続いていたので、彼の電話を受けることはしばらく無かった。
(私は携帯電話を持たない。そして家の電話には留守電機能がない!!
だって、同時多発テロでぷっつり切れてしまったのだ!
そしてそのまま1年が経とうとしている。時の流れは速いのだ。)
私がハンサムに関してはどうでもよくなった頃、ついに私は彼からの電話を取った。
ハンサムはその情熱のハワイアン・テイストを惜しみなく発揮させる。
「ああ、やっと! 君の声がやっと聞けて嬉しいよーー!
(中略)
え? 特別扱いしないで?
何を言ってるんだよ、君は特別なんだよ! Oh My ビューティー!
来週は忙しい? そうか、分かるよ。
(中略)
じゃあ、また来週電話するよ マイ・ハニー。
水曜日か木曜日の夜10時! 絶対に出てくれよ。
今回は会えないけれど、素敵な週末を過ごしてくれるよう祈っているよ。
愛してるよ、Oh マイ・ラヴ!」
…彼と私は、ただ一度、15分くらいしか会っていないのだ。
だが、誰が突然の恋の可能性を否定するだろう? 彼は既に恋の駆け引き準備OKなのだ。
水曜日、それほどひどい女でもない私は、言われた通り電話に出たが、経験豊富な中年の男性との駆け引きになんて敵うわけないもの…。
いきなり戦線離脱を宣言した。
「恋人がいるの」
「えっ…彼は…、日本人かい?」
「そうよ」
「そうか…、彼を、愛しているの?」
「ええ。」
「そうか…、彼は、ボストンに住んでるの? よくデートはする?」
「いいえ、彼は日本にいるのよ」
「あっ、そうなの!
(ハワイアン、復活――!!)
ケルト音楽が好きだって!! 僕は素晴らしいCDを知っているよ、
明日にでも送るから、ぜひ聴いてほしい!
そうすれば僕たちはそのCDについて週末に語れるだろ?
え? 特別すぎる? 何言ってるんだよ、
君は特別なんだよマイラヴ!!
じゃあ次の電話は土曜の朝の9時! いいね?
ではお互い、離れているけど素敵な夜を! アイラブユー、バーイ」
ああ!!青年H(私の恋人)ごめんなさい…!
そして私は住所を教え、翌日に本当にCDが届いたのだった。ラッキー。
なんとイヤリングまで同封されていた。
同封されたカードにはハートのシールがべたべた貼られており 、
全てには香水が吹きかけられていた…。
これはドラマではたまに聞くけど、実際に自分がされたのは初めてだ。
全く、なんてことだろう! 私は家の階段を転げるように降りて行き、大家である女性にその贈り物を見せ、2人で大いに笑い合うのだった。
⇒⇒つづく
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