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イタリアから来た床屋さん. html

〜好きこそ物の上手なれ、を体言している方である 〜
7/30 2003



人は、毎回同じ美容院or床屋に行くものだろうか? 私の素朴な疑問だ。
「友人が経営している」、とか「安い」とか、「トークがいい」とか、理由があるのかな?

私は「マッサージが丁寧な美容院」があって、サービスもそこそこでいいかなー、と思っていたけど、どうもそれだけだと美容院としての主張が甘いんだよっていうの?
すぐにフラリと浮気していた。

しかもその美容院はなぜかイケメンの若い青年がうじゃうじゃいて、髪のセットアップなどをアドバイスしてくれていた。
女性は皆、若く美形で(たまに振り返るとダミーがいる)、パサパサツンツンした乱切り頭の青年に弱いとでも思っているのだろうか? 

私はその中にもし一人でも、非の打ち所のないほど360度ブサイクで、顔を合わせたら思わず顔面にシューッと香水を吹きかけてあげたくなるような男性(動物に例えると黒イノシシブタあたり)、
でも実は誰よりも清潔で知的なジェントルマン、美容師としての腕はインターナショナル・プロ級、
とかいう人が交じっていたら、この美容院の株も(私的に)上がるだろうに・・・と思っていた。



私には長いこと「行きつけの美容院」というものがなかったのだが、 やっと半年ほど前にお気に入り!と言える美容室を見つけたの!!
今回は、(既にかなり逸れてはいるが)その素敵な美容室の主についての話である。

ある日私は
「髪を切りたいなー」
と思って昼下がりの街中を歩いていた。 
流行最先端と名高いサロンは、さすがに繁盛しているが、どうも長々と待たされた挙句にたらい回しにされそうだし、
ナルシスト美容師の独断で、どこで流行してんだか知れないケッタイな髪形にセットされそうな気がする。
「はい出来上がり。 これが今、ブータンで流行っている髪形です。」とかね。

そのうち私は、フラフラと古く小さなショッピングモールに入っていった。
中は自然光が利いていてとても明るく、一見賑やかに飾り立てられたカフェやギャラリーが入っているが、人はいない。 
モール、といっても2階建てなのだが、2階はほとんどが何らかのオフィスになっていて、その全てが閉まっていた。



〜アーチ型の入り口をくぐって見えるモールの全容
一見、感じは良いが人がいない〜


ショッピングモールには、必ずといっていいほどヘアサロンがある!
その小さなモールの中には4店もあった!!(でも3店が閉まっていた)

私はおそるおそる、とりあえずドアが開いている1店を覘いてみた。
スーパーマリオブラザーズのマリオにそっくりなおっちゃんが、美容院とは何の関係もなさそうな雑誌を椅子に腰掛けて読んでいる・・・。

「あの・・・、ここ、開いていますか?」

「ん? うん、開いてるよ。 髪を切りに来たの?」

そうして私は彼のマリオスマイルに安心し、導かれるままに入っていったのである。

その時間、こじんまりとした空間で、私はそのマリオ美容師を独占していたのである。 
シャンプーからドライヤーまで、全部彼が面倒みてくれるから、細かいことにも気付いてくれる。
ちょっと大きな美容院だと、贅沢…というか無い話なのだ。

黒いガウンを着せられて鏡の前に座らされ、ふと室内を見回してみると、 角っこにトロフィーが何本も並んでいるではないか!
彼の若い頃らしき写真(トロフィーを抱えて偉そうな人と写っている)もあった。

マリオは、過去には大通り沿いのもっと大きな美容室を経営しており、美容師の腕を競う大会にも出場していたが、今は店を息子に譲って自分はその小さな床屋を開店し今に至るのだそうだ。
常連客ばかりだから気が楽なんだって。


そしてハサミやドライヤー、雑誌が置かれたテーブルの上には、
明らかに私物の手紙や葉書き、電話代の請求書などが散らばっていたのだが、
ヨーロッパ風な写真の葉書きについて尋ねると、彼はイタリア人の父を持つのだ、と言い、そのまま彼自身の話を色々と教えてくれた。
イタリア料理の話もしてくれて、私は肝心の髪型にも満足、いい場所を見つけて満足、だったのだ。



その後1,2ヶ月して、「また彼に切ってもらおうー」と思って何度か足を運んだのだが、とにかく毎回閉まっていた。
確かに
「僕はもう週に3回くらいしか働いてないから。」
などと悠長なことを言っていたが、それにしても開いていない!!


そんなとき、私は同じショッピングモール内のイタリアン・カフェでスパゲッティを食べることにした。
「その後、もしマリオがいたら切ってもらおう」
と考えていたのだ。



〜日曜はさすがにもっと人がいる平日昼間のイタリアン・カフェ、と赤の他人。
↓は、カフェの2店先にある閉店中のヘアサロン。
せめて椅子に人形でも置いておいて欲しい。〜

注文をしに店内に入ると、店員は一人しかいない。このモール内ではお約束のようだ。

私はメニューよりもその一人だけの調理人をジッ・・・と見つめていた。

「あの、この2つ先にあるヘアサロンについて、何か知ってます? ずっと閉まっているので・・・」

まさか・・・?と思いながら尋ねると、忙しく調理をしていた男は手を止めてキッと私を見た。 

「・・・あの店が、どうかしたの?」

し、白々しい!!!…この声! あの口髭!! 間違いない!!

美容師と調理人という全く違う格好をしていたので気付かなかったが、彼は堂々と副業に励んでいたのである!!!なんて奴!!

「いやーたまに手伝ってるんだよ。 驚いた?」

と照れていたがそういう問題ではないのでは・・・?

だが結局は、出されたスパゲッティは安い上にとても美味しかったし、デザートをサービスしてくれたし、ヘアサロンの予約も受け入れてくれたので、私の疑問は消えた。
実際、私が偶然に激写してしまった上の暇そうな男、彼がカフェのオーナーなのであるが、週に2日ほどマリオに店を頼んでいるらしい。 ここ、週末は本当に混んでるんだ。


多彩なマリオ・・・美容師としても料理人としても自信を持っていてカッコいい。

とにかくそれ以来、私は必ず電話予約を入れて彼の都合の良い時間を尋ねて(普通は逆)ヘアサロンに行くようになった。 
幸い、毎回髪型は好評なのだ。さすがイタリアンー!なんて思う。
そしてカフェの方に彼がいたら、ラッキーと思っておやつくらいは食べて行くのである・・・。



おしまい




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